- 式辞集 -


2008/04/07(月)

2008年度入学式式辞(要旨)

津田塾大学の「教育力」

式辞を述べる飯野学長
式辞を述べる飯野学長

 ご入学おめでとうございます。本日、このキャンパスに、学部749人、大学院14人の新入生の皆さんをお迎えすることができ、教職員、在学生ともども大変うれしく誇らしく思っております。この日まで皆さんを暖かく見守り励ま してこられたご家族、関係者のかたがたにも心からお祝い申し上げます。

 皆さんは、ここで始まる大学生活に対する大きな期待とともに緊張感や不安を抱いておられることでしょう。でも、自信を持って、新たな目標に向かう歩み─輝かしい先輩の列に続く歩み─を始めてください。

 皆さんのその歩みを支える津田塾大学の「教育力」についてお話しいたします。最近、大学の「教育力」が問われているといわれます。大学への進学率が高校卒業者の50パーセントを超え、科学技術が爆発的に進展・ 拡大しグローバル化が進んだいま、個人が持つ知識や技能が日本の社会全体の将来を左右すると考えられます。そうした新しい知識の進展に寄与する新しい世代─未来を切り拓く上で中心的な役割を果たす若者─を大 学は育てなければならないのであり、まさに大学の「教育力」が問われているのです。

 大学の「教育力」とは「大学教育が学生に与えるインパクト」であり、具体的には大学の理念、教育組織、そして個々の授業から成り立っています。津田塾大学の「教育力」を示す理念をスローガン風に申しますと 「21世紀の複雑で多様なニーズに対応すべく、グローバルに、そしてローカルに、勇気、情熱、志をもって世界を拓き、社会に貢献する女性の育成」です。「グローバルに」という言葉は「国際社会で」 という表現で言い換えることができるでしょう。「ローカルに」は「地域社会で」、つまり「身近な社会で」という意味です。そしてその教育の柱は4つあります。
(1)リベラルアーツに裏打ちされた、オールラウンドな人間力
(2)世界に向けての知の発信力
(3)国際的に活躍・行動するための英語力とコミュニケーション能力
(4)生涯を通して学び続ける姿勢

 本学の創立者、津田梅子先生が抱いておられた夢は、女性が教育を受けて自立することでした。女性が教育を受けることが難しかった時代に、津田先生は、女性の地位を向上させるには教育が必要だと考え、 英語教員の資格を得るための訓練を、1900年開校の「女子英学塾」(本学の前身)の目標として掲げました。つまり、高度専門職業人、プロフェッショナルの育成は、本学の建学の精神です。本学で学ぶ間に皆 さんには「英語の津田」といわれる本学が誇る英語教育を通して実力をつけていただきたい。また、英文学、英語学や、国際関係学、数学、情報科学などの分野でのプロフェッショナルになる知識を自分のもの にしてください。

 しかし、本学のめざすところはそこにとどまらないということも、皆さんには知っていただきたい。言語を習得することで思想や文化も学び視野を広げる、また、 さまざまな学問を通してものの見方や考え方を学ぶ、これこそ本学のめざすリベラルアーツ教育の真髄です。津田先生の「女子英学塾」開校式式辞にも、この点が 強調されています。「英語を専攻するにあたり、この専門分野で完全になることに努める一方、完き女性(all-round women)を作るのに必要な他のことがらをないがしろ にしてはなりません。世間一般のことがらを知り、他の分野のことに接するよう、努めていただきたい」と。多様な価値観のぶつかり合う、そして急速に変化する、 そんな状況においても活躍できる、強靱な精神力、たしかな判断力、しなやかな適応力、大胆に発想の転換ができる力、これこそが本学の「教育力」によって培われる 「all-round womenの力」です。

 大学の「教育力」のもうひとつの要素は、大学側の働きかけに対して皆さんの側にどのような心構えがあり、大学教育に何を求めるのか、ということです。 本学が期待するのは、皆さんが、与えられる知識を吸収するといった受け身の姿勢で勉強するのではなく、「自分で考える」「自分から進んでやってみる」 「積極的に参加する」ことです。自主性をもって学ぶ姿勢で、皆さんの側から本学の「教育力」をさらに高めてください。

 この目標達成に向かうひとつの有効な手段は、教員と学生との双方向的なコミュニケーションをはかることです。つまり少人数教育であり、本学が大学名に 「塾」の文字を残している理由もそこにあります。本学は少人数教育を通して、自主性をもつこと、視野を広げること、発信力・コミュニケーション能力を育んで きました。そこから生まれる本学の魅力を十分味わい、自ら意欲を持って、教員に、職員に、働きかけ、多くを吸収してください。

  卒業生の多彩さも本学の重要な特色であり、本学の「教育力」を示しています。津田塾大学関連の書物において魅力的に語られている卒業生の輝かしい歩みの記録は、 皆さんにとってのよき指針となるでしょう。本年4月に開設された千駄ヶ谷キャンパスでの多様な活動のなかには、皆さんにとってのロールモデルである先輩の卒業生と 接する場もできます。そういう場に積極的に参加して、ご自分の将来像を描いてはいかがでしょうか。

 本学での生活が、有意義で実りの多いものであり、これからの長い人生の歩みの中でご自分にとってかけがいのない意味を持つものとして思い出していただける、 そんな経験になりますよう、お祈りし、挨拶といたします。

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2008/03/12(水)

2007年度卒業式式辞(要旨)

道を切り拓く―地域に、そして世界に

式辞を述べる飯野学長
式辞を述べる飯野学長

 晴れの日を迎えられた卒業生の皆さん、おめでとうございます。皆さんは、今日、在学中の数々の思い出を胸に、津田塾大学を巣立ち、 これからの社会を担う人として羽ばたいていかれるわけです。皆さんの前には、あらゆる可能性を秘めた道、多様な形での達成 につながる道があります。どうぞ、自信をもって第一歩を踏み出してください。そして新たな道を拓いてください。

 皆さんは在学中に、学ぶことの喜びを、そして厳しさも、味わってくださったことでしょう。また、さまざまな活動を通して視野を広 め、大きな人生経験を積まれたことでしょう。ご卒業後の歩みの中で、それらの一つひとつが貴重な経験として蘇ってくると思います。 もちろん、津田で学んだこと、経験したことが、そのまま役には立たないと感じる場合もあるでしょう。しかし、津田で皆さんが得たも のは、すぐに役立つ知識や経験だけではないのです。ものの考え方や自ら学ぶ姿勢を身につけてくださったと信じております。

 最近、新聞や雑誌で「就職に強い津田塾大学」「実力を持った津田塾卒業生」という報道をいくつか目にしました。本学が社会で きわめて高い評価を受けていることを、うれしく思っております。この評価は、もちろん皆さんお一人おひとりの努力のたまものである と同時に、本学のきめ細やかな就職支援も、この評価の重要な部分を支えています。それを助けているのが、これまでに卒業生が築 き上げてこられた本学の社会的評価です。先輩が、それぞれ置かれた場において、それまでに蓄えた実力を発揮したからこそ、この評 価があるわけで、私たちは、そのことを感謝しなければなりません。その高い評価から生まれる期待に沿うよう自分の力を高めようと 努力するのも、本学の卒業生の特色、つまり、「津田スピリット」だと、私は誇らしく、また、ありがたく思っております。

 多彩な分野で活躍している卒業生の言葉のなかに次のようなものがあります。「女性として生きる力を津田が与えてくれた。」「仕 事を辞めようと思ったとき・・・続けるべきとの決意を促したものの源は津田塾で過ごした日々のなかにあった。そこで学んだこと、目 にした女性の姿、それが今日の自分の礎になっている。」このような言葉が示している力––道を切り拓いていく力––は、4つの柱で 支えられている本学の教育によって培われたものです。
 (1)リベラルアーツに裏打ちされた、オールラウンドな人間力。
 (2)世界に向けての知の発信力。
 (3)国際的に活躍・行動するための英語力とコミュニケーション能力。
 (4)生涯を通して学び続ける姿勢。
これらは、本学の創立者、津田梅子先生の教育理念を現代の言葉で示したものです。

 皆さんもよくご承知のように、津田先生は、1900年の女子英学塾(津田塾大学の前身)開校にあたっての式辞で、専門的知識を得 て自立してほしいと同時に、専門だけにとらわれず、広い視野を持つオールラウンドな女性になってほしいという願いを述べられまし た。さらに、開校より3年も前(1897年1月)に次のような意見を述べておられます。「女性が liberal educationを受けて、さらに実力 を発揮できるようになれば、家庭ではもちろんのこと、社会においても重要な役割を果たす時代が来るでしょう。」 (”The Future of Japanese Women,” The Far East )このliberal education とは、広い視野をもって自主的に考え行動する 力を育む教育、今、私たちがリベラルアーツ教育と呼ぶものです。

 教育を通してこのような力を身につければ、女性は「道を拓く立場」に立つであろうというメッセージを、津田先生は、やはり女子英 学塾開校より前、1898年夏に、ある国際会議の場で述べておられます。「道を拓く立場」に立つとは、志を高くもって社会に貢献する 力量をもつことです。この言葉がいまから110年も前に述べられていたことは感動的ですらありますが、この考え方が本学の教育の基 盤なのです。現代の社会においても、広い視野をもった社会人、そしてプロフェッショナルとして「道を拓く立場」に立つ、つまり勇気を もち情熱を傾けて社会に貢献するには、判断力、問題解決能力、自分を律する力、責任感などを身につけていることが必要であり、これ こそ、本学の伝統であるリベラルアーツ教育が育む力量なのです。

 このような資質を身につけて本学を卒業した先輩たちは、津田先生の夢を次の世代に伝え、夢の実現に向かって歩んできました。 皆さんも、輝かしい先輩に続いてください。皆さんは「道を拓く」力量を十分もっていらっしゃるのです。今日ここで始まる歩みの中で、 本学で学んだことを社会に還元し、地域に、そして世界に、新たな道を拓いてください。

 この4月には津田塾大学千駄ヶ谷キャンパスがオープンします。そこでの数々の活動のなかに、社会人に向けての「学びなおし」プ ログラムもあります。この新しいキャンパスが、皆さんにとって学びの場であると同時に、皆さん自身がロールモデルとして後輩と接す る場でもあってほしいと願っております。

 本学のスローガンである「21世紀の複雑で多様なニーズに対応すべく、グローバルに、そしてローカルに、勇気・情熱・志をもって世 界を拓き、社会に貢献する女性」となって前進される頼もしい皆さんを、私どもは応援しております。あらゆる可能性が待つ皆さんの 前途に幸多かれとお祈りいたします。

2007/04/03(火)

2007年度入学式式辞(要旨)

将来の花と果実のために、肥沃な土壌を

式辞を述べる飯野学長
式辞を述べる飯野学長

 ご入学おめでとうございます。本日、桜の花が満開の、このキャンパスに、津田塾大学の歴史に新しいページを加える「仲間」(学部687人、大学院23人)をお迎えすることができ、 教職員、在学生ともに、うれしく誇らしく思っております。皆さんは、ここで始まる新しい生活に、期待とともに緊張感や不安を持っていらっしゃるかもしれませんが、 この大学には魔法のような力がありますから、きっとこの大学を好きになってくださるでしょう。

 今日は、皆さんの新たな目標に向かう歩み―次なる夢の追求―が始まる出発の日。そして、その歩みは、私どもの宝である輝かしい先輩の列に続く歩みです。本学の卒業生は、 これまでに約2万7千人と、107年の歴史を考えると多くありませんが、世界を舞台にした本学卒業生の活躍、社会への貢献は、高く評価されています。 何よりも感銘を受けるのは、本学の卒業生が弁護士、政治家、外交官、教師、医者、カウンセラー、音楽家、彫刻家、舞踊家、あるいはボランティアとして 地域で活発に活動する人などなど、きわめて多様な分野で自分の役割をみつけて貢献しておられることです。

 このような卒業生を送り出してきた本学の教育、その歴史、伝統、理念を、ここで振り返ってみましょう。それは、まさに、皆さんが本学でどのような教育を受けることになるのか を認識なさることでもあります。

 まず、本学がめざしている教育をスローガン風に申しますと、「21世紀の複雑で多様なニーズに対応すべく、グローバルに、そしてローカルに、 勇気、情熱、志をもって世界を拓き、社会に貢献する女性の育成」です。その教育の柱は4つ、あります。  1.リベラルアーに裏打ちされた、オールラウンドな人間力。  2. 世界に向けての知の発信力。  3. 国際的に活躍・行動するための英語力とコミュニケーション能力。  4. 生涯を通して学び続ける姿勢。

 「リベラルアーツ(liberal arts)」の語源はラテン語ですが、英語では、liberalはliberate(自由にする、解放する)という語と関連があり、「寛大で偏見にとらわれない」、 「広い視野を持つ」という意味です。古代ギリシャ・ローマの民主制の時代の自由市民は、自由を持つと同時に、優れた知力、体力、統率力、など、責任を取ることのできる能力を持つ、 つまり全人的に優れていることが要求されたわけで、このような人になるための学問が「リベラルアーツ」であり、これは当時の社会においてはエリートになるための学問でした。 本学の創立者、津田梅子先生がめざされたのは、エリート教育であり、リーダーシップを育むリベラルアーツ教育は、本学がめざすところです。21世紀の多様で複雑なニーズに応えて社会に貢献するリーダーにな るためには、しっかりした人間力が必要とされるのですから。

 「オールラウンド」という言葉は、津田先生が1900年に、本学の前身「女子英学塾」の開校式式辞の中で使われたものです。「英語を専攻するにあたり、 この専門分野で完全になることに努める一方で、完き女性(all-round woman)を作るのに必要な、他のことがらをないがしろにしてはなりません。 世間一般のことがらを知り、他の分野のことに接するよう、努めていただきたい。」これは、まさにリベラルアーツ教育の本質でもあります。

 多様な価値観のぶつかり合う、そして急速に変化する、そんな状況においても活躍できる強靱な精神力と、たしかな判断力、しなやかな適応力、大胆に発想の転換ができる力、 これこそが本学のめざすリベラルアーツ教育が育む力であり、「all-round womanの力」なのです。みなさんが、本学での教育を通して、そのような力を持つ人になってくださる ことを願っております。

 多様な世界で活躍・行動する卒業生の例からも、上に挙げた4つの柱が本学の教育の基盤になっていることがわかります。卒業後、それぞれに美しい花を咲かせ、 豊かな果実を実らせることができる、そのための肥沃な土壌が本学での学びによって作られたのです。

 この豊かな土壌を作るために本学が努力している重要な点は少人数教育です。津田先生の建学の精神を引き継ぎ、少人数だからこそ実現できるきめ細かな教育を、 本学はめざしております。ベネッセが行う「大学満足度調査」の最新のデータで、本学は総合評価で全国2位にランクされております。また、本学独自の記録として、 在学生に「津田塾大学の魅力」について短いスピーチをしてもらったものがありますが、そこで在学生が挙げた「魅力」のトップ・スリーは「刺激のある友人たち」、 「みんなで高めあっていこうという雰囲気」、「先生との距離の近さ」です。このように、本学のめざすところが少人数教育を通して学生に伝わっているのは、 大変うれしいことです。教員だけでなく職員と学生との距離の近さも本学の特長です。学生と教職員双方の顔と名前がすべて分かる大学なのです。「大学満足度調査」の 「進路支援」の項目で本学が全国1位であることは、このような状況を示しています。教員も職員も、よい教育を提供できるよう最大の努力を日々しており、 その成果がここに示されているといえるでしょう。

 このようにして津田で学んだこと、津田で得たものが、何十年後かに自分の中でこのように生きていると、誇りをもって感じていただきたい。それこそが、 津田の卒業生であるというアイデンティティなのです。そのアイデンティティを持つために、いま、将来の花や果実のための肥沃な土壌を作ってください。 津田塾大学は皆さんの学びを支えます。皆さんの成長と夢の実現を応援いたします。

 今日ここで始まる皆さんの新たな目標に向かう歩みが、有意義で、実り多いものとなりますよう、お祈りいたします。

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2007/03/14(水)

2006年度卒業式式辞(要旨)

国境を越えた協力から、そして…

式辞を述べる飯野学長
式辞を述べる飯野学長

 晴れの日を迎えられた卒業生の皆さん、おめでとうございます。皆さんは、今日、在学中の数々の思い出を胸に、津田塾大学を巣立ち、これからの社会を担う人として羽ばたいていかれるわけです。 卒業式を英語で Commencement と呼ぶことに示されるように、皆さんにとっては、今日は、始まりの日―新しい人生の最初の日―なのです。

  本年の卒業式には、ひとつ、新しいことがあります。4年前に始まった多文化・国際協力コースが、最初の卒業生を送り出すのです。このコースのめざすところは、多文化・言語教育、国際協力、 国際ウェルネスの第一線で活躍できる女性の育成とうたわれています。

 多文化・言語教育、国際協力、国際ウェルネスという言葉は新しいもののように思えますが、このコースが生まれる前から、本学の卒業生はすでにこういった分野で活躍しています。 このことは、2006年6月に本学のオープン・リサーチ・センターが主催して大成功を収めた「現地から語る国際協力」と題するシンポジウムでも、改めて確認されました。 海外でも国内でも、本学の卒業生はさまざまな視点や考え方をもって独自の国際協力やウェルネス、多文化共生の経験を積み重ねているのです。本学の建学の理念である 「国際性」や「社会に貢献できる力」を育む教育が、すでにあちこちで実を結んでいるわけで、多文化・国際協力コースそのものが、そういった実りのひとつの形であるともいえましょう。 そのコースを終えた新しい卒業生が、今日、輝かしい先輩の列に加わるのです。

  振り返ってみますと、本学そのものが国際協力の中から生まれたといえるのではないでしょうか。創立者、津田梅子先生は、日本政府の方針により6歳でアメリカに渡り、 11年間、当地で教育を受けて帰国し、その7年後にはブリンマー大学に留学しました。したがって、津田先生が受けたアメリカの影響は多方面にわたっており、 本学の建学の精神や教育理念にも多文化を融合させた考え方がはっきりと見られます。

  とくに本学の創設は、国境を越えて女性の高等教育を支援する人びとの財政的・精神的協力がなければ不可能でした。たとえば、津田先生は、 日本社会における女性の地位の向上には、少しでも多くの日本の女性に自分と同じような機会が開かれることが有意義であると考え、 アメリカ留学時代の友人に要請して日本人女性の留学を支援する奨学金を率先して作りました。国際的な協力に根ざしたこの奨学金は、男子にとってすら留学の難しかった時代に、 何人もの女性を留学生としてアメリカに送ることができたのです。その留学生たちが、帰国後、留学で得たものを生かして社会に貢献したことは、多くの場で語られています。

 1900年に津田先生が本学の前身、女子英学塾を開校したときに献身的に支えたアメリカ人女性、アナ・ハーツホンやアリス・ベーコンについても、 みなさんはご承知だと思います。さらには、1923年の関東大震災によって全焼した女子英学塾の校舎の復興を助けたのも、国境を越えた友人の輪でした。 本学にとって、国際協力が単なる理念ではないことがわかっていただけると思います。

  21世紀の社会においては、複雑で多様な問題を解決するために、グローバルに、そしてローカルに、知恵や力を出し合っていくことがさらに求められ、 それを果たすことは、私たちの責任だといえます。とはいえ、すべてがめまぐるしく移り変わり、情報が氾濫する現状からは、自分の立場や方向性を見失わずに 生きていくことさえ困難に思われます。そんなときに津田先生のことばを思い出してみましょう。

 津田先生は、1913年の卒業式式辞のなかで、卒業を「風や波の試練に立ち向かう旅へ出発する船の進水」に喩え、人生の航路には独りで立ち向かわなければならない 困難や問題があると述べておられます。けれども、そこには必ず、「灯台の明り(beacon lights)」があって、「行く手に横たわる危険な珊瑚礁や狭い海においても、 皆さんを安全に導くことでしょう」と。「灯台の明り」の一つは真理、もう一つの明りは「愛と献身という導きの光」です。そして、「真理と献身は、私たちが 人生を無駄にせず、世の中で何か本当に役に立つことを促します。・・・皆さんが学んだことを無駄にしないよう努めることは、この学校と先生方に対する皆さんの 責任であります」と先生は、結んでおられます。(式辞は英文。日本語訳は古木宜志子本学教授による。)

 本学で学んだことを無駄にするのではなく、どのように社会に還元し、社会に貢献することができるのか考えてみてください。きらきらと輝く先輩の列に連なって、 社会のため、次の世代のために、ご自分を役立たせることのできる道をみつけてください。

 本学のスローガンである「21世紀の複雑で多様なニーズに対応すべく、グローバルに、そしてローカルに、勇気・情熱・志をもって世界を拓き、 社会に貢献する女性」になって羽ばたく皆さんを、私どもは応援しております。皆さんの洋々たる前途に幸多かれとお祈りいたします。

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2006/04/05(水)

2006年度入学式式辞(要旨)

キャンパスでの「出会い」と育まれる「信頼感」

式辞を述べる飯野学長
式辞を述べる飯野学長

 ご入学おめでとうございます。本日、学部646人、大学院24人の新入生の皆さん―これから津田塾大学の歴史に新しいページを加える「新しい仲間」―をお迎えし、 教職員および在校生一同、大変うれしく、誇らしく、思っております。

 入学という目標を達成なさった皆さんの次なる夢の追求が、今日から始まります。本学の卒業生は、世界を舞台にして活躍し、その社会への貢献は、多くの分野で高く評価されていますが、皆さんは、 その輝かしい先輩の列に続くことになるのです。今日が、その始まりです。

 その始まりのときに、本学の教育がめざすものと、その基盤である歴史、伝統、理念をお話しいたします。本学がめざしている教育は、「21世紀の複雑で多様なニーズに対応すべく、グローバルに、 そしてローカルに、勇気、情熱、志をもって世界を拓き、社会に貢献する女性の育成」です。そして、その教育の柱は4つあります。
 1.リベラルアーツに裏打ちされた、オールラウンドな人間力
 2.世界に向けての知の発信力
 3.国際的に活躍・行動するための英語力とコミュニケーション能力
 4.生涯を通して学び続ける姿勢
皆さんにこれらの力を得ていただくことは、本学の前身である女子英学塾を1900年に創設された津田梅子先生の教育理念を現代に生かすことなのです。

 具体例を挙げましょう。皆さんが英語を自分のものにする努力を、私どもは応援いたします。「英語の津田」と呼ばれる本学の評価をいっそう高めるような英語教育を展開する 任を、私どもは負っていると考えております。また、皆さんに高度な専門教育を身につけていただくことも、めざしています。資格をもった高度専門職業人の育成は本学の建学以来の 重要な伝統です。

 しかし、英語や高度な専門知識を身につけることの重要性は、社会に出て「即戦力」になるからというだけではないと、私どもは考えております。言語を習得することで思想や 文化を学び、視野を広げることが可能になる、また、専門分野の学問を通して、ものの見方や考え方を学ぶ、それこそが重要なのです。

 最近の社会は、グローバル化・多様化が進み、ますます複雑になり、急速に変化しています。そのような状況において求められる資質は、津田先生の期待された、 広い視野をもって自主的に考え行動することのできるall-round womanとしての力です。これこそ本学のめざすリベラルアーツ教育が育む力であり、卒業生が「津田スピリット」 とよぶ資質のひとつなのです。皆さんが、本学での教育を通して、多様な価値観がぶつかり合い急速に変化する社会においても活躍できる強靱な精神力、たしかな判断力、 しなやかな適応力、大胆に発想の転換ができる力を持つ人になってくださることを願っております。

 本学の教育をふり返る卒業生の記録はたくさんありますが、大庭みな子氏(1953年卒)は、とくに印象的だったものとして「信頼感」をあげておられます。「塾のキャンパスには・・・ 人と人の間に育つものこそが人生の大きな愉しみであるといった気風があった。それは・・・大きい学校では決して得られない個人の息遣いといったものだ。個人の人格を見据え、 自分の力で判断する津田風の約束に従っている者同士の信頼感である」。

 そして重要なのは「出会い」です。歴史家、入江昭氏は「出会いが歴史を作る」と書いておられますが、上の引用にある大庭氏が感じられた「信頼感」は、本学のこのキャンパスでの 「出会い」から生まれたのです。そんな「出会い」を生み、「信頼感」を育てる力が、ここにはあるのだといえるでしょう。それは、熱意ある教員、職員、そして在学生が一緒になって 作り出しているものなのです。

 皆さんは、これから本学での生活において様々な経験をなさるでしょうが、その経験の中には、将来に続く「出会い」が必ずあります。熱心な教員や職員との出会い。 切磋琢磨する友人との出会い。感動的な体験との出会い。その「出会い」から成長の糧を得てください。「信頼感」を育ててください。「生涯、学び続ける姿勢」を身につけてください。

 たとえ失敗や挫折を経験なさることがあっても、目標を失わず、夢を捨てることなく、勇気、情熱、志をもって前進してください。津田塾大学は皆さんの努力を支えます。 皆さんの夢の実現を応援いたします。

 今日ここで始まる、本学での学生生活が有意義で実り多いものとなりますよう、そして、これからの人生のなかで、ご自分にとってかけがえのない意味をもつ経験だったと 思い出していただけるものになりますよう、お祈りして、式辞といたします。

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2006/03/15(水)

2005年度卒業式式辞(要旨)

「勇気」と「情熱」と「志」をもって社会に貢献する人に

式辞を述べる飯野学長
式辞を述べる飯野学長

 晴れの日を迎えられた卒業生の皆さん、おめでとうございます。在学中の数々の思い出を胸に、津田塾大学を巣立ち、これからの社会を担う リーダーとして羽ばたいて行かれる皆さんを心から祝福いたします。

 この喜ばしいときに、津田塾大学の伝統と建学の精神を思い起してみてはいかがでしょうか。1900年9月、今から105年半前、 津田塾大学の前身である女子英学塾の開校に際して、創立者で塾長の津田梅子先生が述べられた式辞には、先生の大きな夢と抱負が 示されていました。先生の「塾を開いた理由と塾の目的」は次のとおりです。

  1. 真の教育に必要なのは校舎や設備よりも教師の資格と熱心と学生の研究心。
  2. 知識の分配ではなく真の教育をするには少人数教育が必須。
  3. 専門の学問にとらわれて視野を狭めるのではなく、完い(まったい)婦人すなわちAll-round women を目指すこと。

 女子英学塾が、この小平に移転したのは1931年のこと。津田先生は新しい校舎が完成する2年前に亡くなられたのですが、 ここで塾が新しく展開されることを楽しみにしておられました。亡くなられる2ヶ月前に、先生はこの地を訪れ、同行した塾の幹事に、 「[新しい校舎の]門をお建てなさいよ。・・・私は校舎の建つのは見られないでしょうから、門だけでも見たいのですよ」といわれたと 記録されています。先生のこの言葉には、ご自分の夢が、この地で引き継がれていくことへの確信が現れています。

 津田先生の夢を実現すべく、本学がめざしてきた、そしていまめざしている教育を現代の言葉に置き換えますと、次のようになるでしょう。 「21世紀の複雑で多様なニーズに対応すべく、グローバルに、そしてローカルに、勇気・情熱・志をもって世界を拓き、社会に貢献する女性の 育成」。そして、その教育の柱は4つあります。

  1. リベラルアーツに裏打ちされた、オールラウンドな人間力。
  2. 世界に向けての知の発信力。
  3.  
  4. 国際的に活躍・行動するための英語力とコミュニケーション能力。
  5.  
  6. 生涯を通して学び続ける姿勢。

 最近は、「資格」を求める学生が増えているといわれます。資格をもった高度専門職業人の育成は本学の建学以来の伝統であり、 そのための英語教育や高度な専門教育を提供していることを誇りとしております。けれども、本学のめざすところはそれだけではありません。 立派な社会人、社会に貢献する高度専門職業人に必要なものは、広い視野、判断力、問題解決能力、自分を律する力、責任感など、 リベラルアーツの教育から得る力です。時代が変わって社会が求めるものが異なっても、それに対応できる力、そして生涯学び続ける姿勢が 重要であることは、輝かしい業績を誇るわが卒業生も強調するところで、これこそが、本学の理念の一つであるリベラルアーツの伝統なのです。 皆さんが本学での教育を通してそのような「人間力」を得て下さったと期待しております。

 病床にあって、津田塾のさらなる発展に関わりたいと願いつつ許されなかった津田先生は、1917年6月の日記に次のような言葉を残しておられます。 「新しい苗木が芽生えるためには、一粒の種子が砕け散らなければならない」。先生が、聖句にある「一粒の麦、地に落ちて死なずば、唯一つにてあらん、 もし死なば、多くの果(み)を結ぶべし」を思い、ご自分を一粒の種子になぞらえて、将来を考えておられたことがわかります。 そして、いま、皆さんは、津田先生の描いておられた夢を受け継ぎ、次の世代に伝えるべく、洋々たる世界への第一歩を踏み出されるわけです。 どのような芽を出し、どのような木になられるのか、どんな花を咲かせ、どんな実をつけられるのか、楽しみです。

 これから皆さんが歩まれる道はさまざまでしょうが、どうぞ学ぶ心と社会に目を向ける努力を忘れず、複雑で多様な問題を抱える21世紀の国際社会に、 そして地域社会に役に立つ人間としてチャレンジする「勇気」と「情熱」と「志」を持ち続けて下さい。そして津田塾大学の卒業生であることに「誇り」を持って、 羽ばたいていって下さい。社会が求めているものに応える力を、みなさんは本学で得ておられるのですから。 次の世代を育てることを考えて、ときには後輩のいる本学を訪ねて下さい。卒業生は在学生にとってのロールモデルです。 皆さんが津田塾大学の歴史を作るのです。本学の宝である皆さんの今後のご活躍そしてご多幸をお祈りして、式辞といたします。

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2005/04/06(水)

2005年度入学式式辞(要旨)

自分を鍛える機会と環境を糧に自らを高める自己再発見の旅へ

式辞を述べる飯野学長
式辞を述べる飯野学長

  皆さん、ご入学おめでとうございます。本日、桜の花が咲き始めたキャンパスに、学部632人、大学院25人の新入生の皆さんをお迎えすることができ、教職員および在学生一同、大変嬉しく思っております。

  皆さんにとって本学への入学は大きな目標達成でしょう。けれども、これは新たな夢の追求、そして新たな自分を知る旅の始まりでもあります。ここでは、皆さんがこれから目標達成に向かう旅を、本学の教職員がどのような理念をもって支えてさしあげられるか、お話ししたいと思います。

  まず、本学の理念、つまり建学の精神について、少しお話しいたします。本学の前身である「女子英学塾」が津田梅子先生によって1900年に創設されたことは、皆さんすでにご存知だと思います。梅子先生が掲げられた塾の教育の柱は3つあります。柱の1つは、勉学・研究における学生の自主性を重視すること。2つ目は、広い視野を持った人間を育てること。そして3つ目に、その目標を達成する方法としての少人数教育です。

(1)自主性の重視、これは受け身的な勉学姿勢ではなく、自分で考える姿勢をさします。「教師や他人に依存する教育は卒業して校門をあとにすると終ってしまうけれども、自主的な思考ができるようになれば、人間は生涯学び続けることができる」のであり、大学はその基盤を作る場だというのが梅子先生のお考えでした。

(2)梅子先生は、学生に広い視野を持つことを求めました。専門分野において秀でることに努める一方で、社会の多様性を知ることを通してall-round woman (complete woman)ををめざす、ということでした。

(3)少人数教育を重視する、この建学の精神は今に引き継がれており、本学では単に知識を与えるだけではない効果的な教育が行われております。少人数教育を通して、さきほど建学の精神として掲げました「自主性を育むこと」「視野を広げること」が可能になると、私どもは信じております。

  昨年度、学生の大学に対する満足度を測る外部のある調査で、本学は満足度のもっとも高い大学のひとつという評価を受けました。このような評価を受けることは、私ども教職員にとって大変うれしいことです。教員も職員もよい教育を提供できるよう日々努力しており、その努力が在学生の皆さんに認められているのだと思います。しかし、「満足度」というのは、大学在学中の4年間だけを対象にして測られるべきものではないと、私は思っております。大学は、学生の将来にわたって関わり続ける役割を担っているはずです。長い人生のどこかで、本学で勉強したことが、こんな風に自分に影響していると、皆さんに満足感をもって思い出していただけるような、そんな教育を教職員はめざしております。

  津田塾大学は、誠心誠意、皆さんの成長のために、皆さんのさらなる夢の実現のために、自分で考える材料、そして自分を鍛える機会と環境を提供いたします。皆さんは、在学中にこれらを有効に、積極的に使って、これからの時代を担うための基盤をご自分のなかに築いてください。

  皆さんの自己発見あるいは自己再発見の旅がどのようなものになるのか、楽しみにしております。本学での生活が、有意義で、実り多いものでありますよう、そして長い人生のなかでご自分にとって重要な意味をもつ経験として思い起こされるものとなりますよう、お祈りして、ご挨拶といたします。

真剣な表情の新入生
真剣な表情の新入生
Categories: 式辞集



2005/03/16(水)

2004年度卒業式式辞(要旨)

いつまでも学ぶ心と社会に目を向ける努力を忘れずに

式辞を述べる飯野学長
式辞を述べる飯野学長

  本日ここに卒業式を迎えられた皆さん、おめでとうございます。津田塾大学在学中の数々の思い出を胸に、未来への先導者として巣立って行かれる皆さんを、心から祝福したく存じます。

  皆さんが卒業されるこの日、津田塾大学の伝統と理念をもう一度、思い起こしてみることには意味があると思います。津田塾大学の前身である女子英学塾が最初の卒業生、つまり第1期生8 人を世に送り出したのは、いまからちょうど102年前、1903年4月2日のことでした。梅子先生はそれから約20年にわたり塾長として卒業生を世に送り出されたのですが、記録に残っている梅子先生の卒業式式辞の中に、卒業生にどのような期待をかけられていたかが示されています。当然それは在学中に学生が身につけてほしいと彼女が願っていたことでした。その大きな部分が、いまの皆さんに期待されていることと重なるのではないでしょうか。梅子先生が卒業式にあたって語り続けられたことをまとめると、次の2点になるでしょう。

1.生涯、学び続けること、つまりたゆまず自己を向上させる努力をすること。それも、単に知識を得ることではなく、しっかりした精神力を備え、自分で考え、判断できるようになること。塾でめざしたのは、卒業後も「考える力」となる教育でした。「[私たちが]力点をおいてきたのは、皆さんが学んだことの量でもなければ、読んだ本の難しさでもありません。私たちは、皆さんが細心にして正確な思考の能力をつけるよう願ってきました。皆さんが単に学ぶだけではなく、これからさらに学び、考えることができるように、とのねらいからです。」(1910年の式辞)

2.塾で自分が得たものを社会に出て分かち合うこと。つまり社会に貢献すること。「撒かれた種子は実をつけなければならないことを心得てください。受けたものは、これに何かを付け加えて他の人たちに伝えていくべきことを。」(1906年の式辞)

  「自分に欠けているものを認識し、受けた教育の価値が認められ、尊敬に値する人になるよう努力してください。そして多くを受け取った者は、多くを他人に与えなければならないことを知っていてください。これらのことを、たとえ部分的にでも、なしえたなら、皆さんは他の日本の女性の権利と名誉への道を拓くことになるでしょう。」(1915年の式辞)

  このような梅子先生の熱い願いは、津田塾大学に今も生きています。梅子先生の教育理念が現代性をもつということは明らかです。最近の女性の地位は100年前とは格段の違いです。男女共同参画社会基本法が施行され、自立した女性が社会で活躍している姿を私たちは当たり前のように眺めています。津田塾大学の卒業生の各方面での活躍ぶりはめざましく、私たちを勇気づけてくれるものです。しかし、この状態が生まれた背後には、道を拓いてくれた先輩の努力があったのです。当時に比べて社会や職場が女性にとって公平になった今も私たちが忘れてはならないのは、後に続く人のために道をさらに長く、さらに平坦にする努力です。

津田塾大学では卒業生一人一人に修了証を手渡します。
津田塾大学では卒業生一人一人に修了証を手渡します。

  もちろん、職業を持つこと以外にも社会に貢献する道はあります。どのような形であれ、私たちは社会に生きている—つまり一人で生きているのではなく他の人びととともに生きている—のですから、どのような立場にあっても、身の回りのことから広い社会全体のことを考え、自分を何かに役立たせることはできるのです。それは同時に「学び」の道でもあります。

  皆さんが、これからどのような道を歩まれるにしても、学ぶ心と社会に目を向ける努力を忘れずにいてくださいますように、そして津田塾大学の卒業生であることを「誇り」に思ってくださいますように、願っております。ご活躍をお祈りいたします。

Categories: 式辞集